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正直に言うと、このワインは“派手さ”で選ぶタイプじゃありません。
でも、ワインをある程度飲んできた人ほど、最後にこういう1本に戻ってくるんですよ。この「Scamandre(スキャマンドル)」は、フランス南部・ガール地方。カマルグ湿地のすぐ近く、ローヌと地中海の間にある、ちょっと特異なテロワールです。砂質と粘土、そして風。フィロキセラすら生き残れなかった土地で、古樹が“自分の力だけで”生きている。主なブドウ品種はシャルドネ、ルーサンヌ、マルサンヌ、そして1919年植樹のカリニャン・ブラン。このカリニャン・ブラン、ほとんど市場に出てきません。
インポーター時代、これを見つけたときは正直ちょっと興奮しました。
このキュヴェは“グランド・レゼルヴ”と名乗っていますが、いわゆるボルドー的な重厚な樽感を期待すると、いい意味で裏切られます。樽発酵・熟成はしている。
でも、それは“主張”ではなく“輪郭を整えるため”。グラスに注ぐとまず感じるのは、
白い花、熟した洋梨、そしてほんのりハーブ。そこに後から、ナッツや蜜のニュアンスが静かに追いかけてくる。口に含むと、驚くほど滑らか。ただし軽いわけではない。
しっかりと芯があって、酸は穏やか、余韻が長い。「派手に美味しい」ではなく、
“気づいたら飲み干しているタイプ”のワインです。
昔、南仏の造り手と話していたときに、こんなことを言われました。「ボルドーは“説得するワイン”、ローヌは“語るワイン”。でもラングドックは、“生活の中で残るワイン”だ」このScamandreは、まさにその言葉のど真ん中にあると思います。主張しすぎない。でも、気づくと印象に残っている。それは、料理でも、人でも、いちばん難しいバランスなです。
このワインはペアリングで化けます。
・白身魚のソテー(バター軽め)
・鶏肉のクリーム煮
・ハーブを効かせた豚肉料理
・熟成系のチーズ(コンテあたりは抜群です)
逆に言うと、シンプルな料理ほど良さが出る。
“料理を邪魔しないけど、確実に引き上げる”タイプです。
この価格帯で、この複雑さとバランス。
しかもビオロジック栽培で、古樹のカリニャン・ブラン入り。
インポーター時代なら、正直「これは隠しておきたい」と思うワインでした。
でも今は、自分の店でこういう1本をきちんと紹介できるのが嬉しいですね。
ワインを飲み慣れている方には“納得の1本”として、
これから少し深く知りたい方には“入口としての1本”として。
静かに、でも確実に刺さるワインです。
原産地呼称:IGP ガール
ブドウ品種:シャルドネ、マルサンヌ、ルーサンヌ